カナダ駐在員も資産運用をしよう|カナダの資産運用口座の種類とメリット(TFSA・RRSP・FHSA・RESP)

  • カナダの銀行・証券会社には、聞きなれない多くの税制優遇口座がありますが、駐在員はまずTFSA(Tax Free Savings Account)を開設しておけば間違いないです。
  • 株式投資など積極的な資産運用を考えている方は運用益と配当が非課税、安全重視の定期預金派の方も利子が非課税になります。
  • 年間の拠出限度額は7,000ドルです。

カナダの銀行や証券会社には複数の種類の資産運用口座がありますが、駐在員が最初に選ぶべきは TFSA(Tax-Free Savings Account) です。年間拠出枠(2025年・2026年は7,000ドル)の範囲内であれば、株式や投資信託などの売却益はもちろん、配当や定期預金の利子もすべて非課税になります。投資経験が豊富でなくても、単純な預金運用から始められるため、安心して資産形成をスタートできるのが大きな魅力です。

この記事では、カナダの代表的な税制優遇口座である TFSA・RRSP・FHSA・RESP の仕組みとメリットを整理し、駐在員がどのように活用できるかを分かりやすく解説します。  

まず、カナダの資産運用口座は 登録口座(Registered Accounts)非登録口座(Non-Registered Accounts) に分かれます。

登録口座(Registered Accounts)

  • カナダ政府に登録されている口座で、税制優遇があります。主な登録口座は以下の4つです。
    • TFSA(Tax-Free Savings Account):日本のNISAに類似
    • RRSP(Registered Retirement Savings Plan):日本のiDeCoに類似
    • FHSA(First Home Savings Account)
    • RESP(Registered Education Savings Plan)
  • メリット:運用益や配当が非課税、または課税繰延。拠出に対して所得控除や政府補助金がある場合もある。
  • 制約:年間拠出枠(運用できる上限額)や用途制限(教育資金、住宅購入、老後など)がある。

非登録口座(Non-Registered Accounts)

  • 政府の税制優遇がない、一般的な銀行や証券会社の口座です。例えば、
    • 普通の証券口座(株式・投資信託売買など)
    • 銀行のChequing口座(日常用)、Saving口座(貯蓄用)
  • メリット:拠出枠や用途制限がなく、自由に投資・引き出し可能。
  • デメリット:運用益や配当、利子はその年の所得として課税される。

定期預金で預けておくにしても、証券会社で株式や投資信託を運用するにしても、登録口座(=税制優遇口座)を通せば非課税メリットを享受できます。安全志向の人にも積極運用派の人にも有利な仕組みです。

カナダには代表的な税制優遇口座として TFSA・RRSP・FHSA・RESP の4種類があります。それぞれ目的や税制優遇の内容は異なりますが、駐在員の場合、実際にはTFSAだけで良いです。

細かいことは不要だからTFSAのことだけ知りたい、という方は読み飛ばして[TFSA(Tax-Free Savings Account)の詳細]にお進みください。

登録口座(=税制優遇口座)の比較

口座主な目的税制メリット2025年拠出枠引き出し制限日本の類似制度
TFSA(Tax-Free Savings Account)資産運用全般運用益・配当・利子が非課税年間 7,000ドル自由に引き出し可能NISA
RRSP(Registered Retirement Savings Plan)老後資金形成拠出額が所得控除対象、運用益は課税繰延年収の18%原則退職後に引き出しiDeCo
FHSA(First Home Savings Account)初めての住宅購入拠出額が所得控除対象、運用益非課税、住宅購入時の引き出し非課税年間 8,000ドル住宅購入目的に限定
RESP(Registered Education Savings Plan)教育資金準備政府補助金運用益非課税生涯最大 50,000ドル(年間制限なし)教育費目的に限定

なぜTFSA以外は駐在員に向かないのか

RRSP(老後資金用)・FHSA(住宅購入用)が駐在員に不要な理由

そもそも駐在員は老後資金や住宅購入をカナダで想定していないこともありますが、それよりも、これらの税制優遇口座は、駐在員の給与体系との相性が悪く、メリットを享受できる可能性が低いです。

駐在員の給与体系は会社によって異なりますが、多くの場合「現地での手取り保証」となっています。つまり、所得税がいくらかかっても会社が負担し、本人の手取りは一定に保たれる仕組みです。  

このため、拠出額が所得から控除されるタイプの税制優遇は、駐在員本人にはメリットがありません(所得税を負担する会社にメリットがあります)。

RESP(教育資金用)は場合によってはあり得るが・・・

RESPは教育資金専用の「政府補助金がつくNISA」のような制度で、うまく使えばメリットは大きいはずです。前述のRRSP・FHSAと違って拠出額の所得控除ではなく、運用益・配当が非課税である事に加え、拠出額の20%(年間最大500ドル)を政府が補助してくれます。

引き出しは教育用途に限られますが、カナダ国内の大学・専門学校だけでなく、日本の一部国立大学や有名私立も対象となっています。対象校は[こちらのカナダ政府公式サイト]から確認ができます。

但し、引き出し時には進学先の在学証明書等を金融機関に提出する必要があり、帰国後に海外から手続きを進めることが出来るか自信がなく、私は利用しませんでした。

税務申告の手間がかかる

駐在中の税務申告はどの国でも負担が大きく、駐在員にとって避けられない悩みの一つです。カナダの税務申告については別途詳しく解説する予定ですが、基本的には会社が手配する税務アドバイザーと相談しながら進めることになります。

その際、RRSP(老後資金用)や FHSA(住宅購入用)を利用している場合は、拠出額や残高を税務申告で報告する必要があります。手間が増えるだけでなく、会社側に「カナダで資産運用をしている」ことが伝わる可能性がある点も、私自身は少し抵抗がありました。

一方で、TFSA は税務申告そのものが不要です。申告書に記載する項目がないため、手間がかからず、会社に知られる心配もありません。

本命のTFSA(Tax-Free Savings Account)は、カナダで最も柔軟に使える税制優遇口座です。大きなメリットとして以下があります。

  • 運用益・利子・配当がすべて非課税
  • 引き出しは自由:目的や年齢などの制限なし
  • 銀行預金から株式・ETF・投資信託まで幅広い商品に投資可能
  • 税務申告が不要

日本のNISAに類似した仕組みで、短期滞在の駐在員でもメリットを享受できる、シンプルで使いやすい制度です。以降で、TFSAでの資産運用を具体的にイメージして説明します。

1. TFSAの開設

TFSAは銀行や証券会社で開設できます。銀行ではGIC(Guaranteed Investment Certificate、日本の定期預金に相当)での運用、証券会社では株式などの運用が想定されます。ご自身の投資スタイルで決めましょう。

  • 銀行
    • GICなどに利用可能です。GICの場合、利息を非課税で受け取ることができます。
    • 資産運用方針が安全志向の方に適していると言えます。
  • 証券会社
    • 株式・ETF・投資信託などに投資可能です。運用益や配当が非課税となります。
    • 積極的な資産形成に向いています。

私は証券会社でのみTFSAを開設しています。リスク志向が強いタイプではないですが、「大きな金額ではないし、せっかくカナダにいる間くらいは少しリスクを取ってみよう」という気持ちで運用しています。

2. TFSAにお金を振り込む(=拠出する)

TFSA への入金は、銀行の日常用 Chequing 口座から銀行や証券会社の TFSA 口座へ資金を振り込むことで行います。これを Contribution(拠出) と呼びます。TFSA の拠出には、いくつか重要なルールがあります

  • 拠出枠:政府が毎年定める拠出枠があり、2025 年・2026 年はいずれも年間 7,000 ドルです。つまり、1 年間に TFSA へ入金して運用できる金額は 7,000 ドルまでです。これを超えて拠出するとペナルティが発生するため、枠を超える分は非登録口座(Non-Registered Account)で運用する必要があります。
  • 駐在員に付与される拠出枠の考え方:駐在開始から駐在終了までの各暦年ごとに拠出枠が付与されます。あくまで暦年管理のため、例えば:
    • 「2025 年 4 月に駐在開始ー2028 年 3 月に帰国」の場合
    • 実質 3 年間の駐在でも 2025〜2028 年の 4 年分の拠出枠が付与されます
  • 駐在途中で TFSA を開設しても、拠出枠は駐在開始時に遡って使える:赴任後すぐに TFSA を開設しなくても、駐在開始時点まで遡って拠出枠を利用できます。例えば:
    • 先ほどのケースで、駐在開始から 1 年後の 2026 年 4 月に TFSA を開設した場合
    • 2025 年分の 7,000 ドルは繰り越し可能
    • よって 2026 年 4 月時点の拠出可能額は 合計 14,000 ドル
  • 拠出枠は「個人単位」で管理される:TFSA の拠出枠は個人ごとに管理されるため、複数の金融機関で TFSA を開設しても、拠出枠は合算で消費されます。  

3. 自分自身のスタイルで運用

TFSA に拠出したあとは、自分の投資スタイルに合わせて自由に資産運用を行えます。駐在員にとって TFSA を活用する資産運用上のメリットは次のとおりです。

  • 運用益・配当・利息がすべて非課税であること
  • 引き出し制限がなく、帰任時を含めていつでも資金を取り出せる柔軟性があること
  • 自分の投資方針に合わせて、幅広い投資商品を選べること

4. 駐在終了時にどうするか

TFSA に限らず、駐在期間中に資産運用を行ううえで最大の悩みの一つが「帰国時にどう扱うか」です。リスクや手間を考えると、駐在が終わりに近づくにつれて徐々に現金化し、帰国時にはリスク資産をゼロにしておく、というのが一般的な対応だと思います。一方で、

  • 帰国後も TFSA は維持可能(ただし新規拠出は不可)
    • テクニカルには、帰国後も TFSA 口座を維持することは可能です。  新規拠出はできなくなりますが、口座自体はカナダ国内では引き続き税制優遇口座として扱われ、配当や利息はカナダ国内では非課税のままです。
  • 日本居住者に戻った後の税務上の扱い
    • 帰国後もカナダドル資産を維持する場合、注意が必要なのは、日本に帰国して日本の税務居住者になった後の扱いです。
      • TFSA 内で得た配当・利息は、日本では 「国外で得た所得」 とみなされ、日本での確定申告が必要
      • 日本では通常、配当・利息に対して 約 20%(所得税+住民税) が課税される(申告分離課税の場合)

つまり、カナダでは非課税でも、日本では課税対象になる点は押さえておく必要があります。

私の場合は帰国後も定期的にカナダへ来る予定があり、カナダドルが必要となるため、TFSAを維持して運用を継続する方針です。アクティブに売買するのではなく、高配当 ETF などを長期保有する形を想定しています。

確定申告に慣れていて、これらの税務対応が負担にならない方であれば、カナダドルのまま運用を継続するという選択肢も十分にあり得ますが、「税務申告の手間」「為替リスク」などを踏まえると、一般的には帰国前に徐々に現金化しておく方が安心です。

ここまでご覧いただきありがとうございました。今後とも Canada Expat Guide をよろしくお願いいたします。